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先輩ルポ

香川県高松市 O様邸

#07

住んで5年、
「友だち感覚」の設計士と作り上げた美容室兼住宅

香川県高松市。瀬戸内海に面した、四国の中心的都市のひとつです。
市内を碁盤の目のように縦横に走る主要道路を車で進めば、コンビニ、ドラッグストア、全国チェーンの飲食店…。見覚えのある看板たちを眺めていると、建物の陰から現れたのは、そんな街並みとは一線を画す、眩いばかりの真っ白な塗り壁でした。
この四角い箱を重ねたようなおうちが、今回おうかがいするO様邸です。

5年間でカスタマイズを重ねた
くつろぎのLDK

この家は、美容室と自宅がひとつになった店舗兼住宅。2階建ての建物のうち、1階の一室を奥さまが営む美容室として使っています。店舗と住居で出入り口が分かれていて、主要道路に面したブルーのドアが美容室の入り口。住居の入り口は側面にあります。

ひとたび足を踏み入れると、思わずため息がこぼれました。
白と木目を基調にした温かみのある室内、インパクト抜群の大きなダイニングテーブル、アンティーク調の家具、壁面のキッチンツールや間接照明、ショーケースに並べられた食器…。日常で多くの時間を過ごすというLDKも、まるでショップのような洗練された空間が広がります。

O様「住み始めたときは、造作のカップボードとテーブルだけで、このソファもあのチェストもなかったんですよ。」

室内を彩るのは、お気に入りのショップから骨董品店まで、さまざまなお店で見つけたインテリアの数々。“仕事をがんばった自分へのごほうび”として、この5年で少しずつ増やしていったといいます。白、木目の明るい茶色、差し色のグレー。テーマカラーを3色に絞ってそろえるのが、全体に統一感を持たせる秘訣なんだとか。

美は細部に宿るもの

話を聞けば聞くほど、本当に細やかな部分までこだわり抜かれていると分かります。

たとえば、造作のダイニングテーブル
大きな板を支える脚には、軽くて強度を出しやすい黒のスチールをあしらうのが一般的ですが、天板と同じ木製に。重厚感のある脚は、床の無垢板やインテリアとも、しっくりと調和しています。
階段の手すりは、アイアンを馴染みのよいペールグレーに塗装しました。

ダイニングとキッチンは、掃き出し窓から光がたっぷり入りますが、道路側にあるリビングはあえて窓を作っていないため、昼間でもほんのりと影が差します。照明の光の強さやバランスは、もっと担当設計士からのアドバイスを聞けばよかったと感じているそう。
「壁際の天井に、間接照明があっても、よかったかもしれませんね」と語ります。

一方で、夜は雰囲気がよく、とても落ち着く安らぎの空間になるんだとか。

生まれ育った地元で、
自分らしい働き方を

店舗の床は、靴を履いたまま出入りできるモルタルの土間に。
住居部分と同じテイストで、白・木目・グレーの3色で統一されていますが、色の割合が変わると、随分印象も変わります。

おふたりとも地元は高松市。奥さまは、関西で美容師の勉強と経験を積み、「地元で働きたい」とUターン。市内の美容室で忙しなく働くうちに「一人ひとりに向き合って、施術と会話を大事にしながら、丁寧に接客したい」という思いが強くなり、独立を決意しました。

最初は、店舗兼住宅を建てるつもりはありませんでした。
ご主人は、美容師ではなく会社員。まわりで店舗兼住宅を建てていたのは、“夫婦そろって美容師”の人ばかり。悩みに悩んで、ご主人に相談してみると、「したらいいやん」と、やさしく背中を押してくれたのです。

こうして、O様の理想の店舗と家づくりが始まりました。

「友だち感覚で意見を言えるのが大きかったですね」

もともとは知人からの紹介で、別の地元工務店を訪ねていました。
担当者からはとてもよくしてもらったけれど、提案されるプランや施工例が、自分の思い描いていた理想とは少しズレていたそう。どこか満たされない気持ちを抱えながらSNSを眺めていると、ふと目に留まったのが、コラボハウスの建てた家でした。

高松スタジオで出会ったのは、男性の設計士。サバサバとした人柄が印象的で、ひととおり要望を伝えると、「とりあえず図面を描いてみましょうか」と、サラッと言われたそう。
後日でき上がった図面には、理想のイメージが的確に映し出されていました。

O様の思い描く“世界観”をすぐさま理解してくれた担当設計士とは、すっかり仲良くなり、友だち感覚でフランクに意見を言い合える関係だったとか。打ち合わせは、トントン拍子に進んでいきました。

デザインを重視しつつ、
かしこくコストダウン

非日常を感じさせる空間でありながら、毎日暮らす場所としての生活のしやすさ。相反するような2つの要素を、担当設計士がちょうどよい塩梅でバランスをとってくれたといいます。それに加えて、かしこく費用を抑える工夫が散りばめられています。

白の塗り壁が際立つ外観は、「店舗らしく見せたい」というリクエストから。表面にある窓は、美容室の入り口横にある1つだけ。お客さまはもちろん、通りがかりの人にも鮮烈な印象を与えます。
よく見ると、道路から見えない裏側と2階の外壁は、白のガルバリウム鋼板を鎧張りにしています。塗り壁にしたいけれど、予算との兼ね合いで悩んでいたときに、担当設計士から提案を受けたもの。面によって外壁材を使い分ける大胆な発想と、全面塗り壁にした当初の見積もりとの差額に驚いたといいます。

天井は、コンクリート打ちっ放しのように見えますが、実は壁紙。サンプルを片手に、どれが一番本物のように見えるか、担当設計士と一緒に厳選しました。
本物とは異なり、断熱性能が確保しやすいメリットも。
帰り際に「エアコンの設定、18度だったんですよ」と、にこやかに告げられて、この日一番びっくりしました。なぜなら、取材したのは雪がちらつく真冬日。そんな外の気温を忘れるほど、室内は穏やかな暖かさに包まれていました。

家族のお店の
マスコット的存在

打ち合わせの最中、「ペット飼います?」と担当設計士から何度も聞かれていたそう。それぞれの実家にペットがいて、ふたりとも別れの辛さを知っていたので、迎えるつもりはありませんでした。

しかし、住み始めて半年ほど経った頃。
コロナ禍の影響で、個室で施術を受けられるプライベートサロンの需要が高まりました。予約が急増し、目が回るほどの忙しさに。「思っていたライフスタイルと違う…」と、癒やしを求めてペットショップを巡っていたら、この子にひと目惚れしてしまったんだとか。
ご主人も最初こそ反対していましたが、試しに1回見に行ってみると…。

今では看板犬として、ご夫婦はもちろん、お客さまの癒やしにもなっています。

オンもオフも自分らしく
好きなものに囲まれた空間で

お店は、コロナ禍が落ち着いた今も、多くのお客さまに愛されています。
外に植えられたオリーブは、「店が繁盛したらでっかくなるわ」と、開店日に父からもらったプレゼント。「ほんまにでっかくなりすぎて、毎年めっちゃ切りまくってます」と笑います。

ふたりとも「2階は寝るだけ」で、カウンターの端で作業をしたり、愛犬と一緒にソファでくつろいだり、家にいるときはLDKで過ごすことが多いといいます。
休日には、カウンターテーブルを囲んで、友人たちや家族を招いて食事会をすることも。ときには、大きなテーブルがぎゅうぎゅうになるほど、にぎやかになるそう。オンもオフも充実した日々を送っています。

キッチンの真横の席を指して、「目に入る空間が一番心地いいのがここ。ここからの眺めが、穏やかな気持ちになれて、お気に入りなんです」と、教えてくれました。