家づくり先輩ルポ
愛媛県松山市、青々とした山の裾野に広がる閑静な住宅街。
少し細い道を抜けると、レンガの小道に色とりどりの草花に囲まれた、イングリッシュガーデンを思わせる素敵な庭が見えてきました。表札にはかわいい猫のイラスト。ドアを開けて出迎えてくれたのは、この家に住んでちょうど4年を迎えたばかりのI様ご夫婦です。
愛猫2匹とのびのび暮らすための家
定年退職を機に、松山市へ移住を決めたおふたり。ペット可のマンションを購入し、猫2匹を迎え入れました。しかし、ペット可物件といえど、「夜中、騒音になっていないか」「鳴き声が隣家まで響いていないか」など、どうしても周りが気になってしまうもの。ほどなくして、「猫と一緒にのびのびと暮らすには、やっぱり一戸建てにしたほうがいい」と、住み替えを決意しました。
もともと好感を抱いていて、「家を建てるならコラボハウスにしようと決めていた」と話すI様。ほかの住宅会社のカタログを数社取り寄せてみても、住宅展示場を訪れてみても、その思いは変わりませんでした。
はじめての猫ファーストな家づくり

担当設計士にとって“猫と暮らすための家”は、初めての試みでした。猫の習性や生態をとことん調べて勉強し、得た知見を惜しみなく設計に注いでくれたといいます。
たとえば、化粧梁は猫が歩きやすい幅を考えて数センチ単位で調整したり、高所には眺めのよい出窓やビュースポット、おこもり感のある“猫部屋”を設けたり。
2ヵ所あるトイレ置き場は換気扇をセットでつけて、ニオイがこもらないよう配慮されています。もちろん、清掃や手入れも行き届いているので、室内はペット特有のニオイがほとんどしません。
I様「第一種換気システムも導入しているので、窓を一切開けなくても一年中空気がキレイなんです。」
マンションライクに暮らせる平屋

外から見ると2階建てに見えますが、実は平屋建て。ロフト部分が煙突のように飛び出したユニークな形状です。
玄関から奥に伸びる長方形の間取りに、夫婦ふたりと愛猫2匹に必要な部屋や設備がぎゅっとコンパクトにまとめられています。マンションのように暮らせて、回遊動線で生活しやすい間取りは、家づくり当初からの希望だったそう。玄関から洗面脱衣室とLDKにつながる2方向の廊下は、とても便利だといいます。
入り口側の天井高は、2m20cmと少し低め。その分、廊下を抜けた先に広がる、吹き抜け天井のリビング・ダイニングが、より高く際立って見える視覚効果を生み出しています。
採用してよかった設計士の提案

元気いっぱいの愛猫たちが、化粧梁や壁面のキャットウォークを伝って、リビング・ダイニングの上空を縦横無尽に動ける“猫動線”もしっかりと計画されています。寝室の壁一面にあるニッチを、リビング側も開けて、愛猫たちが通れるようにしたのも、担当設計士からの提案。毎日ここを通って寝室とリビングを行き来していて、お気に入りのルートだといいます。
テレビ裏のアクセントウォールは、エコカラット。石目調で重厚感たっぷりのテクスチャーと上部に仕込まれた間接照明が、室内のほどよいアクセントに。エコカラットには調湿・消臭効果があるので、室内の空気をキレイにするのにも、ひと役買っています。

外壁は、スタイリッシュな濃緑のガルバリウム。よく見ると、一部が白の塗り壁になっています。外壁と植栽の色が近いので、庭や花壇の前だけ、植栽が見えやすくなるように変更しました。
取材したこの日も、坪庭にある緑から赤に色づき始めたモミジの葉が、白の塗り壁を背にキレイに見え、窓越しに室内を鮮やかに彩っていました。
住んでみて分かった3つのポイント

愛猫のために考え抜いて設計しましたが、実際に住んでみると想定外のことも。
キッチンは、“猫立ち入り禁止”にしたかったので、リビング・ダイニングとは扉で隔てた独立型に。中が見える大きな窓を設けました。しかし愛猫たちは、扉を閉めるとやっぱり人恋しいのか、扉をガリガリと引っ掻いたりノブを開けようとしたり、強引に中へ入ろうとするように。
普段は安全に気を払いつつ扉を開けて、不在のときだけ閉めています。

また、ご飯置き場の傍らにある、かわいらしい水栓。「流れる水をペロペロ飲む姿が見られたらいいな」と思って設置しました。しかし、猫は人間のようにご飯と水分を一緒に取らないので、ご飯置き場と水飲み場は、離れた別々の場所にあるのが望ましいそう。
今は、ちょっとした洗い場として活用しています。
階段下に設けた猫用の個室も、「引っ越しのときだけ、想定していた用途で使いました」。荷運びで人の出入りが激しく、バタバタしている間は、この小部屋で待機してもらったのだとか。
普段は2匹とも、ご夫婦の目が届くリビングや寝室にいるので、この部屋にこもることはありませんが、水飲み場やキャリーケースなどのかさばりがちな猫グッズ置き場として、フレキシブルに使っています。
愛猫もご夫婦も快適、
悠々自適なセカンドライフ

この家で、充実したセカンドライフを満喫しているご夫婦。松山市は住み始めるまで縁もゆかりも無い土地でしたが、近所の人たちはもちろん、愛媛県の高齢者大学校に通ったりもして、交流の輪を広げています。
室内のいたるところに飾られている植物画は、実はご夫婦が描いた作品。移住してから始めた新たな趣味のひとつで、おふたりともプロ顔負けのできばえです。飾り棚やニッチには、かわいい額に収められた記念写真、沖縄旅行で作ったシーサーの置き物や退職時に後輩たちからもらった寄せ書き入りのダルマといった、これまでご夫婦が積み重ねてきた、温かな思い出の品があふれています。
ガーデニングも、この家に来てから始めた趣味。自分たちで苗を探してきたり、近所の人や知り合いから株を分けてもらったりしながら、穏やかにマイペースに堪能しています。
「オリーブが今年はじめて実をつけて驚きました。1株しか植えていないので、虫がどこかから花粉を運んできてくれたんでしょうね」と、思わぬ変化も楽しんでいる様子。
猫は警戒心が強く、引っ越しをすると新しい家に慣れるまで数日から数週間かかると言われています。しかし、住み始めたその日から、2匹とも家じゅう元気に駆け巡っていたそうで、愛猫たちも新しいマイホームがすぐに気に入ったようです。
夜中も元気に動き回ったり、明け方は布団の上から体にダイブして起こされたり。「でも、周りに気を遣うストレスに比べたら、こっちのほうが断然いいなって思います」と、やんちゃな愛猫たちに振り回される日々すら、生き生きと楽しんでいるおふたりでした。

